女子大生・古典芸能と遭遇
伝統の現在 Next 2
「海神別荘 ~夢幻能形式による~ 」
原作:泉鏡花 脚色:森崎一博 演出:加納幸和(花組芝居)
@新宿紀伊国屋ホール
能・狂言・演劇のコラボという壮大なコンセプトの作品。
古典芸能には暗いので、終演後まで、こういう作品のジャンルがあるんだろうと思っていた。
でも考えてみると、
能のように仮面をつけて演じるのはヒロインにあたる役者だけだし、
近代文学が原作なので狂言にしては台詞も平明。(なかには全く近代演劇みたいな言い回しの所もある)
無知な観客の目に一つのジャンルの作品と映ったほどだから、
コンセプトにしていた「融合」は大成功したと言っていいだろう。
実際、
この作品を今年のベスト3に挙げていた劇評家もいたほどだ。
見る目が無いので男と女の区別が把握しきれず、
プログラムを見て「ああ、あれ女だったんだ」「別人だったんだ」と思ったこともあったが、
見ていて全く違和感は無かった。
プログラムの粗筋を読みながら舞台を思い出していると、
「老人はいつしか娘を失った父親に姿を買え、深い夢の中に沈んでいくようだ。」
という一節が冒頭の舞台の風景に重なって見える。
濃い緑の舞台と笛の音で、観客も一緒に海の中に沈んでいくような感覚。
そうか、
古典芸能って、プログラムを先に読んでおくもんなんだ。
子供の頃は
暗黙の了解によって成り立つ劇に抵抗があったけど、
実際に見て感じたのは、
人間の想像力と表現力の豊かさだった。
仮面に落ちる影が変わると、ヒロインの美女の表情が変わる。
しぐさ一つで男女が変わる。
「暗黙の了解」っていうのは決して勝手に決められたもんじゃないんだな、と実感した。
同じくアメブロの「女子大生カンゲキのススメ」管理人さんのツテで、
今回の観劇は実現した。
浅薄な知識ではまともに評価することができないけど、
深遠な古典の世界に触れることができて、とてもよかった。ありがとうございます。